[ ホームページコンセプト会社案内サービス案内PERSONSPencilNet

------------------------------------------------------------------------
 ●コラム:補助線                   かくだよしあき
------------------------------------------------------------------------

  僕は学校が嫌いだった。
  同じ時間にみんなが同じ方向を向いて、同じことを考える、
  それがナンセンスだと思っていたからだ。

  それに、教科書に載っていることは、もう誰かがまとめているのだから、
  今さら覚えなくても、必要なときにそこを見ればいいと考えていた。
  だから、今習っている事は、「いつ必要なのか?」「何のために必要なの
  か?」「どこで役に立つのか?」などが、僕は知りたかった。
  そんな事を先生に質問してみたけど、「そんなことは知らなくていい」と
  か「試験のときに役に立つ」という答えしか返ってこなかった。

  僕が凄く興味を持っていたのは、教科書に載っていることを「どうやって
  発見したのか?」「どうやって調べたのか?」など、教科書には載ってい
  ないことだった。

  そんな僕に、初めて興味を持たせてくれたのが中学の数学の先生だった。
  授業の中で、図形の「証明問題」というのがあった。
  「三角形△ABCは、AB=ACの時、△ABCは二等辺三角形である」
  とか、言うやつだ。

  僕にとって、それはなぞなぞみたいで、それが解けたりすると、めちゃく
  ちゃ嬉しくて、特に誰も解けない問題を瞬時に解いて見せたりするのが、
  おもしろくて仕方なかった。

  それは、教科書に載っている誰かが発見したものや、すでにやったことを
  記憶していく勉強とは違い、今、まさに自分が発見し、自分で答えを導き
  出していくというような感じがして、ワクワク、ドキドキした。
  授業があんなに楽しいと思ったのは、あれが最初で最後かも知れない。

  僕は結構、この「証明問題」に凝っていって、中学2年の時には大学の入
  試問題を解いていた。また、期末試験では誰も解けなかった問題を全校で
  僕だけが解いたということで、ちょっと学校で有名になったこともあった
  りした。

  その後も、僕は新しい問題を欲しがっていったが、先生は「もう勉強しな
  くてもいい、十分だ」と言って、新しい問題をくれようとしなかった。
  結局、僕の学校嫌い、先生嫌いは直らなかった。
  
  さて、この「証明問題」で僕が一番興味を引かれ、感動し、心を揺さぶら
  れたのは「補助線」だった。

  凄く難しい問題になると、非常に複雑で、既にそこに書かれている線だけ
  では答えを導き出すことができず、ただでさえややこしい、線の多いとこ
  ろに更にもう一本新しい線を増やすのだ。
  そして、その線を他と関連図けて、答えを導き出すのだ。

  この、後から自分で入れる線が「補助線」である。

  一見、線を増やすことで、線が増え、交点が増え、角が増えて、よけいに
  複雑になるように思われるが、今までなかった形が見えてきたり、新しい
  着眼点でその図形を見たりできて、解決できなかった答えが見えてくる。
  そして、結果的に問題を解決できるのである。

  「補助線」は、通常解決できない問題を解決する魔法の杖である。

  その線を入れるだけで、今までばらばらだったものに関連性が出てきたり、
  また、新たな着眼点が見いだせたりする。
  「補助線」を引くことは、一見更に問題をややこしくするように思えるが、
  実は、全てをシンプルにまとまって見えるようにしてくれるのだ。

  それは僕にとって、単に、数学の問題というだけではなかった。
  何かを悩んでいるときに、更に新たな問題が増えたときに、新たに関連づ
  けが起こって、今まで見えていなかったことに気がつき、真理が見えてく
  るような気がした。

  このことは、僕の人生に対する考え方を決定づけた。僕は、数学で数学を
  学んだのではなくて、数学で人生を学んだ気がする。

  人生に置き換えてみると、いろんな問題を抱えているときには、問題をひ
  とつずつ解決していこうとするのが普通だけれど、更に新しい問題をひと
  つ抱えることによって、全ての問題が、実は大きな一つの問題に見えてき
  て、今まで解決できなかった事が、その事によって、非常にシンプルに物
  事が考えられるようになり、何か糸口が見えてくることがある。

  いろんな問題が起きていて、解決できないような大きな問題があるとき、
  さらにもっと大きな問題や、新たな困ったことが起きると、「補助線」の
  事を思い出し、なにか根本的な解決ができると思えるのだ。

  この「コラム」も、もしかすると僕にとって人生の「補助線」なのかもし
  れない・・・

戻る


[ ホームページコンセプト会社案内サービス案内PERSONSPencilNet